石巻通心


2013年 石巻市 日本製紙石巻工場
1938年に設立された日本製紙の工場は石巻を象徴するもののひとつ。力強く白煙を吐き出すその景色は、当たり前にあった街の日常のひとこまでもある。

 


2013年 石巻市 旧北上川沿い
石ノ森萬画館を抱く中瀬を市街地から渡ると、旧北上川を遡上した津波により被災した建物が撤去された更地が目立つ。その中にぽつんと夕陽を浴びる建物があった。

 


2013年 石巻市 トヤケ森山
石巻を一望できる小さな山からの夕景。眼下に田園が広がり隙間を旧北上川が縫うように走る。昼と夜との幕間の空に美しいグラデーションを見た。

 


2013年 石巻市
夜の帳か朝の始まりか。巡り、繰り返される太陽と月に「当たり前」の大切さを想う。
明けない夜はない。

 


2013年 石巻市 日和山公園
沿岸部を一望出来る日和山公園。あの日、多く人が絶望の中で立ちすくんだであろうこの場所に今年も桜が咲いた。

 


2011年 石巻市鹿立浜
牡蠣の養殖。津波被害に耐えた「種牡蠣」と呼ばれる牡蠣を沈め2年後の収穫を望む。撮影当時、この浜にあった牡蠣剥き場は壊滅していた。再開の見込みすら立っていない中でのスタートだった。

 


2011年 石巻市雄勝町
「船さえあれば俺たちは大丈夫」と語る漁師は、四国の漁師から提供を受けた船を自走で持ってきた。「魚は”顔”で獲るもんだ」と教えてくれた。

 


2013年 石巻市北上町
追波湾に流れ行く北上川。護岸の修復工事も始まる前、朝の静かな時間のなか鳥が飛んでいた。

 


2011年 石巻市鹿立浜
牡蠣養殖の船に乗せてもらった。奥には牡蠣棚が広がっている。

 


2013年 石巻市北上町十三浜
その名の通り十三の浜からなる地域。その中の一つ、大室の高台から望む朝日。右側に二つ並ぶ松島がこの浜の象徴だ。多くの友人たちが暮らしている場所でもある。

 

 

 

【大室南部神楽】
2013年5月4日北上町十三浜伝統芸能「大室南部神楽」復活祭

 

北上町十三浜は、東北最大の河川「北上川」の河口、追波湾に面する十三の小さな浜の総称である。被災後、人口の流出や高台移転の問題など、多くの問題を抱えていた。そんな中、三十代の若者たちが中心となり大正時代から続く地域芸能「大室南部神楽」を復活させようと立ち上がった。

 

多くのものを失った中で、町が向かうべき未来の姿を考えたとき、世代を問わず共通していたのが「神楽」だった。
毎週の稽古に加え、「面」や「太鼓」などの道具を集める作業も進めた。特に「面」には強いこだわりがあり、津波に流されずに残った過去の資料や写真を探すところからはじめ、ようやく「これだ!」という彫師に出会う事が出来た。

 

 

 

稽古では「かんで」と呼ばれる台詞やその節回しを、長老たちが唄い、それを書き起こして覚える。
舞の稽古では、「だいにおしぇらいだ!(誰に教えられた)」と厳しい言葉が飛ぶ。津波で犠牲となった神楽の師匠の言葉だ。自分たちの神楽にプライドを持ち、今の若い衆まで継いで来た人だった。
稽古で舞う演者それぞれの胸には、師匠の姿があった。

 

そうして迎えた「大室南部神楽復活祭」本番。

 

 

大室湾に浮かぶ松島を背景に、飾られた無数の大漁旗が浜風にたなびく会場では、震災後に地元を離れた人たちが涙と笑いの再会を果たし、ボランティアや支援をきっかけに十三浜に携わった人たちが全国から駆けつけていた。

 

 

そこここで繰り返される握手と抱擁、互いの状況を気遣う声。酒を酌み交わし冗談を笑い飛ばす。神楽という芸能、そして祭りの持つ本来の意味をここに見た気がした。こうした人の営みが地域のコミュニティを形作ってきたのだろう。

 

この復活祭の立役者、佐藤満利は言う。「コミュニティ作りなんて言うっちゃ?ありゃ嘘だ。コミュニティなんて作ろうと思って出来るもんでねえ、自然に出来てくもんだ。」

 

大団円で幕を閉じた大室南部神楽復活祭。盛宴を極めた終演後の打ち上げでは、「頼むど!」と長老たちから若い衆へのバトンが渡されていた。ようやく一歩目を踏み出した大室の歴史は神楽とともに確実に次世代に継がれている。

 

 

 

 

Profile:

 

上野 祥法 Ueno Yoshinori <www.uenoyoshinori.com>
写真家、Book Cafe & Bar カゼノイチ店主
17歳のときに地球を周る船旅に出る。そこで、世界と写真に出会う。
帰国後、写真を始める。以降、地球10周70カ国超を旅する。
2011年3月、東日本大震災の発生により緊急支援活動を開始。3月18日に宮城県石巻市に入り、以降延べ1年半を宮城県石巻市に拠点を置き活動を行う。
現在は、愛知県にてブックカフェを経営する傍ら、フリーカメラマンとして音楽ライヴ写真を中心に活動を続けている。
2014年9月28日〜10月5日まで、代官山のギャラリー「SPACE K」にて、写真二人展「接点 -A POINT OF CONTACT- 」を開催予定。

 

Works:

 

バーレーン大使館レセプションにて東日本大震災写真展
『TSUNAMI3・11 東日本大震災記録写真集(豊田直巳 編集/第三書館)』
『TSUNAMI3・11 PART2 東日本大震災記録写真集 (豊田直巳 編集/第三書館)』
『奇跡の災害ボランティア「石巻モデル」』 (中原一歩/朝日新書)
「HERBESTA FESTIVAL'11」オフィシャルカメラマン
『写真家によるポストカード展』出展
書籍『Z's Stage(多賀秀行・上野祥法/A-Works)』出版
ロックバンド「ソウル・フラワー・ユニオン」『キセキの渚』『ゴースト・キネマ1993-2013』CDブックレット、ミュージックビデオなどに作品を提供

 

売上の行き先:

 

ポストカードセット『Series: A day in the life,』 の売上の10%は、左記にある「大室南部神楽」の継承に努める「大室南部神楽保存会」へと寄付されます。
保存会は、津波により面や衣装をはじめ、全てのものが流されました。現在も稽古を続けていますが、場所がなく工事業者のプレハブを間借りしている状況です。支援金は、保存会の今後の活動や、稽古場の設置などに充てられます。